よくわかる運賃計算 その3(分岐駅通過特例)
こんにちは。notte!をご覧いただきましてありがとうございます。
VALのLABOで掲載していたやたら長文で理屈っぽいこのシリーズですが、こちらのnotte!で続けていくことになりました。
VALのLABOの過去記事
かなりゆったりしたペースですが、これからもよろしくお願いします。
さて、すっかり真冬になってしまいましたが、夏の旅行の続きです。
前回稚内まで来た私は1泊し、いよいよ例の切符を使った旅行を開始しました。
1日目:2014年8月10日(日)
(1)特急 スーパー宗谷2号 52D 札幌行き
稚内(7:10) → 札幌(12:14)
経路 : 稚内 - 宗谷本線 - 旭川 - 函館本線 - 札幌
特急 スーパー宗谷 キハ261系
最初の列車はスーパー宗谷です。札幌までは約400km。高性能なキハ261系でも5時間かかり、北海道の広さを実感します。
(2)特急 北斗12号 5012D 函館行き
札幌(14:35) → 函館(18:17)
経路 : 札幌 - 函館本線 - 白石- 千歳線 - 沼ノ端 - 室蘭本線 - 長万部 - 函館本線 - 函館
特急 北斗 キハ183系
札幌で昼食にラーメンを食べて次の列車へ。この北斗12号は車両故障などが原因で1年ほど運休となっていた列車ですが、ちょうど8月1日から運行再開し、乗ることができました。
(3) 特急 白鳥96号 4096M 新青森行き
函館(18:21) → 青森(20:17)
経路 : 函館 - 函館本線 - 五稜郭 - 江差線 - 木古内 - 海峡線 - 中小国 - 津軽線 - 青森
特急 白鳥 485系
函館からは青函トンネルを通ってこの日の目的地、青森に向かいます。いよいよ2015年度に迫った北海道新幹線開業に向けた準備が進められている区間ですね。
さて、1日目の移動経路を地図で見るとこのようになります。
1日目の経路
稚内を出発し、札幌、函館で乗り継ぎながら3本の特急で青森までやってきました。それぞれの特急の終点で次の特急に乗り継いでおり特に問題なさそうに見えますが、実はここで切符に関するある問題が発生します。
まず、札幌付近の拡大図を見てみましょう。
札幌周辺
同様に、函館周辺です。
函館周辺
この2つの図、何か気づきませんか?(江差線が一部廃止されていることではありません。しくしく)
そうです。札幌でも函館でも重複して乗車している区間があるということです。
第1回でお話した通り、原則的に後戻りするような切符は発売できないことになっています。
実際に私が使った切符でも札幌までは行かず、スーパー宗谷と北斗が交わる白石(しろいし)で乗り換えることになっています。同様に函館でも、北斗と白鳥が交わる五稜郭(ごりょうかく)で乗り換えになります。
このため、私は切符の経路を外れて乗車してしまったことになります。このようなことをして大丈夫なのでしょうか……?
はい、こんなこと言うくらいなので大丈夫です。
JRの運賃計算ルールには、「分岐駅を通過する列車に乗っててその駅で乗り換えられない時、決められたところなら先の駅で乗り換えをしてもいいよー」というものがあります。
複数の路線が分岐する駅は、割と街の中心駅からちょっと離れたところにあったりしますので、このような特例が設けられているんですね。
このように乗車する場合の切符は、分岐駅から乗換駅までの折り返し区間の距離は除外して計算され、発行される切符もこの区間を通らない切符として発売されます。
本来ならちょっとでも切符の経路をはみ出しちゃいけないのですが、この特例のお陰で最低限の運賃で自然な乗り換えができるってわけですね。便利便利。
ただし以下の制限があり、どこでも好き勝手に折り返してもいいというわけではないのご注意を。
- 決められた50の区間でのみ利用可能(2015年2月現在)
- 「JR東日本:きっぷに関するご案内」:“分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例” 参照
- 折り返し区間では途中下車ができない
今回の場合は、「白石 - 札幌」と「五稜郭 - 函館」が指定されていますから、どちらもめでたく札幌と函館で乗り換えができるのでありました。よかったよかった。
さて、無事乗り換えができることはわかったのですが、ちょっと私にとって困ったことが起きました。
先ほども挙げたとおり、折り返し区間内では途中下車(途中の駅で、一旦改札の外に出ること)をすることができません。あくまでも乗り換えするためだけの特例だよということですね。
しかし、この日札幌駅での乗り継ぎ時間は2時間以上あり、しかもお昼時。せっかくの札幌、慌ただしい旅だけどせめてラーメンぐらい食いたいってもんです。
でもこの特例区間は 途中下車ができない……でも改札の外に出てラーメン食べたい……困った、切符を放棄して外に出てしまおうか……
待て待て早まるんじゃない、もちろんそんなことする必要はありません。
もし折り返し区間中で途中下車したい場合は、分岐駅からの降車駅までの往復運賃を精算すれば改札外に出ることが可能です。
今回の場合、白石-札幌間の運賃210円 × 2 = 420円を支払うことで、めでたく札幌駅で降りることができました。
この取り扱いは時刻表にも記載されており、駅でもこのような案内がされていました。
札幌駅の案内ポスター
このルール、よくよく考えてみるとメインの切符は白石駅で途中下車扱いにして、はみ出した部分は別の切符を買って乗車するというのと同じ、ということになります。
要するに、特に特例が適用されないところでは、乗車する経路をカバーするだけの切符があれば(または精算すれば)、連続して乗っても構わないというわけですね。
そんなこんなで、私もめでたく札幌駅の改札を出てラーメンを食べることができました。うまかったです。
……と、いったところで1日目は終了です。
次回2日目は、本州をひたすら南下します。
記事を書いた人
乗換BIG4:鈴木(すずき)
ヴァル研究所 開発部所属。駅すぱあとの中枢に潜り込み、乗り鉄のかたわら運賃制度を極めんとするエンジニア。足の向くまま気の向くままに鉄道旅を楽しんでいる。