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【時間地図】地下鉄の路線図も歪めてみた

【時間地図】地下鉄の路線図も歪めてみた

こんにちは。乗換BIG4の廣戸です。

以前、「時間地図」というものをご紹介いたしました。その際、東日本や日本全国といった、地方を跨いだ広い範囲を対象にした時間地図をお見せいたしました。

今回の記事は、もう少し狭い範囲、1都市レベルで時間地図を作ってみたらどうなるか、というのを考えてみたいと思います。

ちなみに時間地図を作る際の「所要時間」ですが、今回は「すべての鉄道(特急・新幹線を除く)による最短所要時間」とします。つまり、あえて「路線図上に表示している路線も使える」という前提で作図を行います(地下鉄のみを利用した場合の時間地図も、記事の最後におまけとして例示しています)。

今回対象とする地域、路線図はこちらです。

謎の図

路線の形状と路線色を見てピンとくる方もいらっしゃるでしょうか。

この路線図は、「東京メトロ」「都営地下鉄」の地下鉄各路線に加え「JR山手線」(さらに補助的に薄い線で、JR中央・総武線の荻窪-錦糸町間などJR一部区間)を表したものです。要するに、東京の都心部に関する移動のしやすさなどを分析する、というのが今回の記事の目的です。

例えばこの路線図を「渋谷駅を中心とした時間地図」に変形させてみるとどうなるでしょうか。つまり、「渋谷駅から東京メトロ・都営地下鉄・JR山手線各駅への所要時間を、渋谷駅から見た方向は同じまま、渋谷駅からの地図上の距離としてプロットしてみるとどうなるか」ということです。

謎の図渋谷駅を中心とした時間地図」

……いかがでしょうか。元の路線図が原形をとどめていませんね。

この時間地図だけだと少々わかりにくいので、元の路線図と時間地図がどのように対応しているのかを観察するため、変形の様子をアニメーションにしてみました。

謎の図

渋谷駅から遠ざかる駅・路線もあれば、逆に渋谷駅に近づく駅・路線もありますね。この渋谷駅を中心とした時間地図の特徴について、特に4点ほど説明したいと思います。

1. 渋谷駅の真北にある新宿駅や池袋駅は近づいている

渋谷駅から新宿駅や池袋駅へは、JR山手線に加え、停車駅数が少なく速達性の高いJR埼京線・湘南新宿ラインが通じています。これらの路線の存在により、渋谷駅から新宿駅・池袋駅へは距離の割に短時間で移動することができるので、時間地図上では距離が短くなっています。

2. 渋谷駅の東側の空洞が、元の路線図以上に広くなっている

謎の図

渋谷駅の東側には、東京メトロ日比谷線の広尾駅、東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線の六本木駅があり、この2駅が渋谷駅から特に遠ざかっているように見えます。
これは、渋谷駅から広尾駅・六本木駅への直線距離(それぞれ約1.9km・約2.7km)の割に所要時間(それぞれ14分・17分)が長いということを示しています。

渋谷駅からこの2駅に行くためには、一旦JRで1駅乗車して恵比寿駅で日比谷線に乗り換える必要がありますが、実地図で見ると「一旦南に移動し再び北上する」という遠回りな経路だということがわかります。

ちなみに、渋谷駅と六本木駅の間にはバスが走っており、所要時間は最短9分ほどです。バスを考慮に入れると、また違った時間地図が描ける予感がしますね。

3. 山手線の内側の駅の中で見ても、渋谷駅に急激に近づいている駅もあれば、逆に離れている駅もある

渋谷駅に近づいているのは、赤坂見附駅・永田町駅や、九段下駅・神保町駅など、東京メトロ銀座線・半蔵門線沿線の駅です。つまり、渋谷駅から乗り換えなしで到達することができる駅となっています。

これに対し遠ざかっているのは、都営大江戸線 国立競技場駅、東京メトロ丸ノ内線 四谷三丁目駅、都営新宿線 曙橋駅、また先述の六本木駅などです。

渋谷駅からそれらの駅にたどり着くには乗り換えが必要であり、実地図上では直線的でない移動になっています。

4. 一部路線の末端部や途中駅が異様な曲がり方をしている

地図の東側、東京メトロ東西線や都営地下鉄 新宿線の末端部が、まるで渋谷駅方向に反ったような形状をしています。特に都営新宿線は、時間地図上でギザギザな形になっています。
これは、東西線なら終点の西船橋駅・途中の浦安駅が快速停車駅、新宿線なら終点の本八幡駅や途中の船堀駅、大島駅などが急行停車駅であり、途中の通過駅よりも短い(または非常に近い)所要時間で到達できることを示しています。

また、都営三田線の巣鴨駅や新板橋駅(JR埼京線 板橋駅から徒歩乗換可能)なども、路線の途中で急に渋谷駅に近づいている駅となっています。
これは、周辺の都営三田線の駅と違い、巣鴨駅や新板橋駅(板橋駅)が渋谷から1路線(JR山手線やJR埼京線)で乗換なしで到達できる駅であるため、時間地図上でそのような現れ方になっているのです。

次回予告

いかがだったでしょうか。路線や駅が密集した路線図を時間地図に変換することで、ある駅から行きやすい場所・行きにくい場所などが、興味深い形状で図に現れる、ということを実感していただければ幸いです。

次回以降では、東京都心部の他の駅を中心とした時間地図、また他の地域の時間地図をご紹介したいと思います。

おまけ

「東京メトロ・都営地下鉄しか使えない」という条件のもと、渋谷駅を中心とした時間地図を描いてみると、また違った形状になります。
JR(特に山手線)が使えなくなることで、渋谷駅から恵比寿駅や目黒駅、五反田駅などが非常に遠い駅となってしまいますね。

謎の図

アニメーション版

謎の図

記事を書いた人

乗換BIG4:廣戸(ひろと)
ヴァル研究所開発部所属。幼少期から鉄道好きで、その知識・熱量は「人間駅すぱあと」と呼ばれるほど。20代でJR全路線完乗を達成した乗り鉄の中の乗り鉄。